イタンジ社長 伊藤嘉盛のブログ

ITを使って不動産業界にイノベーションを生むイタンジ株式会社の社長ブログ

都内にマンションを買う時に読むべき書籍3冊

マンションは経年による価格下落リスクがあるので、購入タイミング、購入エリアなどによって成功と失敗が大きく分かれます。タイミングは相場を予測する必要があるため、最適解を見つけるのは難しい一方、新築・中古の判断はある程度正解はありますし、エリアに関しては書籍やネットで調査できるので念入りに調べることをおすすめします。

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■マンションは10年で買い替えなさい

アトラクターズラボの沖さんの書籍。不動産業界の方が読んでも、参考になる箇所があります。新築購入から10年間は「政府の住宅政策による税金メリットを享受できる」「大規模修繕のリスクを負わない」などの理由から10年で買い替えをすることを推奨している。坪単価が高い方が価格下落リスクが少ない、駅からのアクセスを重視するなど、各論も納得できる内容です。

マンションは10年で買い替えなさい 人口減少時代の新・住宅すごろく (朝日新書)

マンションは10年で買い替えなさい 人口減少時代の新・住宅すごろく (朝日新書)

 

 

 ■東京マンション資産価値予測

東京都内各エリアの土地柄、賃料・売買相場、地歴などがよくまとまっています。
発売から5年以上経っているため、一部内容が古いが、自分が住むエリアの基本情報を抑えるのには最適です。

東京マンション資産価値予測 DATA BOOK―エリア別データ2万件の定量分析による

東京マンション資産価値予測 DATA BOOK―エリア別データ2万件の定量分析による

 

 

■東京土地のグランプリ

東京の地位(ぢぐらい)をランキングで紹介しています。上記で紹介した東京マンション資産価値予測より、対象が人気のある特定エリアに絞られており、定性的内容が深堀されています。高級マンションを購入する場合は特に読んでおいた方がいいです。マンションのパンフレットは、所在地がどこにあろうが「プレミアム、最高、高台」のように高級そう感じるワードが使われているので、実際の地位がわかりにくい。パンフレットには「プレミアム」って書いてあるけど本当は「上の下」なんだ、とわかるようになります。注意点としては、スポンサーになっているディベロッパー会社の分譲予定地が本来より高く評価されています。

東京土地のグランプリ 2012-2013 最新版 (別冊セオリー)

東京土地のグランプリ 2012-2013 最新版 (別冊セオリー)

 

 

 

あなたの仕事は将来なくなるかも?未来に向け、今考えるべきことは

先月読んだハフィントンポストの記事が印象的でした。

「技術革新で仕事の5割が消滅」20年後の社会
これからの20年で現在のアメリカの雇用の50%以上がコンピューターに代替される | Social Design News【ソーシャル・デザイン 公式サイト】

この記事によると、今後20年で、今ある仕事のおよそ半分は、コンピューターによって自動化される可能性があるとのこと。

コンピュータに置き換えられる可能性の高い仕事TOP15は以下の通り。

680位 調達事務員
681位 パッケージング&充填機械オペレーター
682位 銅版画工と彫刻師
683位 受付、レジ係
684位 スポーツの審判
685位 保険鑑定士
686位 融資担当者
687位 オーダーを受けるスタッフ
688位 仲介スタッフ
689位 保険の集金者
690位 組み立てラインスタッフ
691位 データ入力者
692位 図書館技術者
693位 新規顧客アカウント作成スタッフ
694位 写真処理労働者及び加工機オペレーター

 

不動産業界で直接関係するのは、仲介スタッフとデータ入力者です。
私はセミナーで毎回、「タクシー業界とgoogleの自動運転、宅配業界とamazonの小型ヘリ配達のように、テクノロジによって一つの業界が吹き飛ぶ、大きなイノベーションが必ず不動産業界にもやってくる。」と言っています。今、すごく重要なことは自動化の領域を決める意思決定だと思います。

何を自動化すればいいのか?コンピュータと人間の違いについて、ドラッカーは「経営者の条件」で以下のように書いています。

 コンピュータの強みは論理的な機械であるところにある。それはプログラムに組まれたことを正確に行う。迅速かつ正確に行う。ということは、あくまでも愚鈍なるものとしてそれらの仕事を行うということである。論理はもともと愚かである。コンピュータは単純で明白なことしかできない。

これに対し、人は論理的ではない。知覚的である。ということは遅くていい加減だということである。しかし人は聡明であり洞察力がある。応用力がある。すなわち人は、不十分な情報から、あるいは情報なしでも、全体像がどのようなものであるかを推し量ることができる。プログラム化していないことを考えることができる。

私が不動産仲介業をやっていた頃、内見しても契約が取れない営業を「鍵を開ける人」、物件の提案力が無い営業を「チラシの印刷機」と揶揄しているのを聞いたことがあります。これは頭を使って付加価値を出さないと営業として駄目だよという教戒です。しかし、これから先は、頭を使っているだけではアルゴリズムに代替されるので駄目です。今や、ビッグデータ人工知能の進歩は目まぐるしいものがあります。コンピュータが学習すれば、ベテラン営業マンと同じ水準の提案ができます。

それは本当に人間がやる必要があるのか?自動化を阻むボトルネックは何か?
この問いが大切で、法規制など自動化の障壁を克服していくことが人間のやるべき仕事だと思います。これから先、知の巨人ドラッカーですら想像できなかった領域がコンピュータによって置き換えられていくのかもしれません。私も真剣に考えています。

事業を成功させるためには、ホップステップジャンプより垂直ジャンプ

今日は、目標達成のためにどのような経路をたどるべきか、について考えました。

結論を先に言いますと、私は最近、成功したら次のステージに挑戦するホップステップジャンプ型の打ち手はイケてないな、と思っています。

一般的には、Cという本丸の目標がある場合、A,B,Cというマイルストーンを設定して、Aが成功したらB、Bが成功したら本丸のCを成功させよう、というように考えます。これをホップステップジャンプ型の打ち手とでも呼びましょう。
たとえば、次のようなケース例です。

BtoB向けのサービスを開発しました。大きなビジネスにするために、最終的なターゲットは大手企業です。しかし、実績がないから大手企業には売り込みに行けず、まずは知人の会社に使ってもらい改善を重ねよう。試作品が出来たら、営業をしやすい中小企業に使ってもらい、利用実績をつくろう。中小企業の利用実績が十分に集まったら、大手企業に営業に行こう。

確かに現実的で、大手にいきなり営業を試みるより成功の確率が高そうに思えます。
私も実際にこのように考えて経営計画をつくっていました。

しかし、事業をやって思ったのは、ホップステップジャンプの思考だと、最終目標を完遂できない、あるいは、余計に時間が掛かるのでは、ということです。

なぜなら、各ステップの成功率の掛け合わせが、本丸を成功させる確率になってしまうからです。上の例でいえば、(知人の会社と協力して良いサービスを開発できる確率)×(中小企業が受け入れる確率)×(大手企業が受け入れる確立)の掛け合わせが成功の確率になります。ステップが増えれば増えるほど、成功までの時間が掛かるし(機会費用が大きい)、成功確率は下がっていきます。詳細まで予測されたシナリオほど予想が外れるのと同じ原理です。

また、ホップステップジャンプの打ち手で陥る失敗パターンとして、初期のステップで成功するために、初期ターゲットのニーズに合わせて製品を改善した結果、最終ターゲットのニーズとはかけ離れた製品になってしまうことがあります。考えてみれば当然だけど、中小企業に売れたからと言って大手企業に売れるとは限らない。

だから、打ち手としてイケてるのは最初から本丸に挑戦することです。
これは垂直ジャンプ型の打ち手とでも呼びましょう。
大手企業がターゲットの製品であれば、障壁が高そうでも最初から大手企業に売り込んで、無料でもいいから使ってもらって改善を重ねた方が、ホップステップジャンプより断然早いです。特に、スタートアップ企業ほど時間に迫られているから、垂直ジャンプの打ち手を採るべきだと思いました。

部屋探しの前にハッキリとさせておきたい3つの疑問

部屋探しのときに気になることや疑問があっても、うやむやのまま契約まで進んでしまうことってありますよね。賃貸で引っ越すのは生涯で1~2度程度ですし、不動産業界を経験していないとなかなか理解できない不動産取引特有の商習慣があるので、やむを得ないことだと思います。今回は、部屋探しの時に生じる疑問について、不動産業界経験者の視点から解説します。

 


①申込が入りそうですは本当か
内見をした後によく言われるセリフです。果たして「申込が入りそうです」という不動産屋さんの言葉は本当なのでしょうか。
これは、本当の場合もあるし、申込の意思決定をあおるためにいう場合もあります。不動産屋さんにあおられないためには、申込が入りそうな物件の内見はしない旨を伝えることです。さらに、内見を予定している物件の当日の内見予約数を事前に確認するとよいです。これら二つのことをするだけで、不動産屋さんに前もって釘をさすことになり、不動産屋さんは簡単には「申込が入りそうです」とは言えなくなります。
一方、本当に申込が入りそうな場合もマイペースを保つことが肝心です。物件を取られないように我先にと申込をしてしまうと、条件交渉のタイミングを逸してしまいます。このタイミングで不動産屋さんに交渉のイシニアチブを取られてしまうと、他に申込希望者がいることを理由に、なし崩し的に交渉を譲歩することになってしまいます。もう一方の申込者が条件交渉をしていないとは限らないので、申込が入ると聞いても焦らずきっちりと条件交渉をしましょう。

 

②上手な賃料交渉の方法は
ズバリ、多少ふっかけて交渉を始めることです。不動産取引の場合、最初の条件オファーより好条件で成約することはありません。もしも貸主側に5,000円の賃料交渉幅があったのにも関わらず、3,000円の賃料交渉からスタートしてしまうと最高の条件で入居することはできません。目安としては、賃料であれば5~7%程度の交渉からスタートしましょう。(家賃10万円の場合、5,000円程度の交渉から始める)不動産屋さんにこの条件だと難しいかもしれないと言われても、まずは大家さんに相談してみてください、とお願いしてみましょう。

 

③仲介手数料無料は本当にお得なのか
仲介手数料が無料になるケースは2つあります。ひとつは、管理会社や貸主から直接募集の依頼を受けている元付(モトヅケ)会社と直接取引した場合です。この場合、管理会社・元付会社は貸主から手数料をもらっているため、借主から手数料を取らないことがあります。
もう一つは、募集の大元ではない仲介会社に広告料という手数料が支払われるケースです。広告料とは、貸主または管理会社から仲介会社に支払われるインセンティブ・フィーのようなものです。この場合、仲介手数料は無料になるものの、広告料の原資は借主が支払う礼金であったり、毎月の家賃に上乗せされていたりするので、実は借主の経済的メリットは小さかったりします。
また、広告料が発生する物件を管理会社と直接契約すれば、広告料分が割安になり(礼金がゼロになったり、フリーレントがついたり)、さらに、仲介手数料が無料になる場合がありますので、「仲介手数料無料」がどちらのケースがよく確認をしましょう。
参考:出来る限り「大家に近い物件」を探す方法

以上、みなさんも不動産取引の仕組みや傾向を知って、上手に部屋探しをしましょう。

全国縦断賃貸ビジネス セミナー

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本日は全国縦断賃貸ビジネスセミナーの講師として、仙台に来ています。

仙台は5年ぶりで、前回はリーマン・ショック不良債権化した賃貸物件を購入する案件での出張でした。最近、不動産市場は活況で、ファンド都内の物件を購入したというニュースが多く、不動産の景気サイクルが一巡するほど時間が経ったんだと、時の流れを実感しました。

次回のセミナーは12月3日@大阪、4日@名古屋となっていますので、お会いできる方は是非ご連絡下さい。

イタンジ、3億円の資金調達をしました

イタンジはこの度、グロービス・キャピタル・パートナーズニッセイ・キャピタルSMBCベンチャーキャピタルの3社から約3億円の資金調達を行いました。役員3名だけの小さな会社にも関わらず、ベンチャーキャピタルのみなさんから高い評価を頂き、大規模な資金調達ができたことを嬉しく思っています。

 

■開発リソースを強化、事業スピードを上げるために資金調達を実施

イタンジは管理会社と直接つながる賃貸情報サイト「HEYAZINE(ヘヤジン)」と賃貸業務支援クラウドシステム「REcS(レックス)」という、二つの事業を行っています。現在、メンバーは3名のみで、私もCOOの千葉もプログラミングが書けないので、二つのシステム開発をCTOの将積が一人で担当するという離れ業をやっていました(実は今も)。

HEYAZINEはリリースから9ヵ月で2000店舗を超える不動産会社が利用するサイトになり、掲載企業が増えるたびに開発が発生、また同時に、REcSは機能改善のタスクが山積みという状況でした。今年の8月頃から、開発リソースが制約となって、イメージしたタイミングで経営の打ち手が打てなくなりつつあったので、ギアチェンジをする必要性を感じていました。
メンバー3人で話した結果、「我々のビジネスには需要がある」と確かな手ごたえがあったので、資金調達を実施して事業スピードを加速させようということになりました。

 

■「人」で決めたベンチャーキャピタル選定

ベンチャーキャピタルを選定するときの基準は「人」でした。せっかくベンチャーキャピタルが同じ舟に乗るのなら、この機会を最大化すべく、3人でやっているよりも「会議が楽しくなる」「アイデアが鋭くなる」「事業スピードが加速する」ようなパートナーに資本参加してもらいたいと考えました。
どのベンチャーキャピタルを選ぶかは、(当たり前ですが)投資後に違いが出る、と思っていて、「次回のステージで十分な追加投資ができるか」「レスキューファイナンスができるか」など、違いはあるにせよ、お金には色がありません。
そうなると違いが出るのは、定例会議やアドバイスを求めた時に浸み出てくるベンチャーキャピタリストの経験や勘所だと考えました。
事業参加に消極的なハンズオフ型の投資家を好む経営者もいますが、イタンジの場合、「ロジカルかつゴリゴリと事業戦略を話したい」という“知的体育会系”の傾向があるため、ディスカッションパートナーの役割を果たせるキャピタリストを探しました。
結果的に、当初から一緒にやりたいと思っていたグロービス、ニッセイ・キャピタル、SMBCベンチャーキャピタルから出資を受けることができ、これから開催されるであろう、鋭い意見が剛速球で飛び交う(ある意味汗臭そうな)定例会議が今から楽しみです。

 

■「誰とやるか」にこだわり、最高のチームを作りたい

今後は、調達した資金を利用して採用を強化していきます。

イタンジは創業時も、今回の資金調達の時も「誰とやるか」を大切にしてきました。イタンジのミッションは、インターネット上で住みたい物件をきちんと自分で探せるような世の中をつくることです。 次のステップは、世の中の大きな課題をITの技術力で解決すべく、最高のエンジニアチームを作ることだと考えています。

先行者メリット、後発者メリット

IT業界において先行者の優位は、ネットワーク外部性によってもたらされると考えられている。

例えば、LINEのようにコミュニケーションプラットフォームが構築され、1億人のユーザーを集まると、LINEで連絡を取ることが多くのユーザーにとって一番便利になり、他のツールが使われなくなる。一般的には、先行者によって一度ネットワークが構築されれば、後発者が参入することは困難だとされている。また、ネットワーク外部性が働かなくても、一番乗りで市場に参入して、後発者が追い付けずに、そのまま市場が拡大して先行者がナンバーワン企業で有り続けるケースも多くある。

 

ところが、事業環境によっては先行者メリットが確保されず、後発者の方が有利になるケースがある。技術進歩と市場拡大の速さがポイントとなる。

例えば、ウォークマンのように市場拡大のテンポが速く、技術進歩が遅い場合は先行者メリットは極めて高い。ソニーは商品投入当初とほとんど変わらない製品を10年以上も売り続けることができた。

 

では、不動産IT業界の場合はどうだろうか。不動産業務システムに関していえば、技術進歩が速く、市場拡大が遅いパターンだと考えられる。5年前までは技術進歩は遅かったが、クラウドSNSスマートフォンなどの登場によって技術進歩のテンポが速くなっている。この場合、技術の変化が速いため、先行者の製品は陳腐化する。一方、後発者はより安い開発コストで製品を投入できるため有利になる。

しかし、後発者が投入した製品もすぐに陳腐化するため、優位性を保つことが難しい。一度は勝つことができても、勝ち続けることが難しい市場といういことだ。競争に勝ち続けるためには、技術進歩の速さに対応できる優れた開発力とそれを支える資金力が必要となる。

 

ここからの示唆は、不動産IT会社が成功する、あるいは生き残るためには

①技術を中心とした強みの構築、

販管費のかかる飛込み営業ではなくプル型での顧客獲得、

システム開発の投資を続けるための高い粗利益率、が条件になるということだ。