イタンジ社長 伊藤嘉盛のブログ

ITを使って不動産業界にイノベーションを生むイタンジ株式会社の社長ブログ

全国縦断賃貸ビジネス セミナー

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本日は全国縦断賃貸ビジネスセミナーの講師として、仙台に来ています。

仙台は5年ぶりで、前回はリーマン・ショック不良債権化した賃貸物件を購入する案件での出張でした。最近、不動産市場は活況で、ファンド都内の物件を購入したというニュースが多く、不動産の景気サイクルが一巡するほど時間が経ったんだと、時の流れを実感しました。

次回のセミナーは12月3日@大阪、4日@名古屋となっていますので、お会いできる方は是非ご連絡下さい。

イタンジ、3億円の資金調達をしました

イタンジはこの度、グロービス・キャピタル・パートナーズニッセイ・キャピタルSMBCベンチャーキャピタルの3社から約3億円の資金調達を行いました。役員3名だけの小さな会社にも関わらず、ベンチャーキャピタルのみなさんから高い評価を頂き、大規模な資金調達ができたことを嬉しく思っています。

 

■開発リソースを強化、事業スピードを上げるために資金調達を実施

イタンジは管理会社と直接つながる賃貸情報サイト「HEYAZINE(ヘヤジン)」と賃貸業務支援クラウドシステム「REcS(レックス)」という、二つの事業を行っています。現在、メンバーは3名のみで、私もCOOの千葉もプログラミングが書けないので、二つのシステム開発をCTOの将積が一人で担当するという離れ業をやっていました(実は今も)。

HEYAZINEはリリースから9ヵ月で2000店舗を超える不動産会社が利用するサイトになり、掲載企業が増えるたびに開発が発生、また同時に、REcSは機能改善のタスクが山積みという状況でした。今年の8月頃から、開発リソースが制約となって、イメージしたタイミングで経営の打ち手が打てなくなりつつあったので、ギアチェンジをする必要性を感じていました。
メンバー3人で話した結果、「我々のビジネスには需要がある」と確かな手ごたえがあったので、資金調達を実施して事業スピードを加速させようということになりました。

 

■「人」で決めたベンチャーキャピタル選定

ベンチャーキャピタルを選定するときの基準は「人」でした。せっかくベンチャーキャピタルが同じ舟に乗るのなら、この機会を最大化すべく、3人でやっているよりも「会議が楽しくなる」「アイデアが鋭くなる」「事業スピードが加速する」ようなパートナーに資本参加してもらいたいと考えました。
どのベンチャーキャピタルを選ぶかは、(当たり前ですが)投資後に違いが出る、と思っていて、「次回のステージで十分な追加投資ができるか」「レスキューファイナンスができるか」など、違いはあるにせよ、お金には色がありません。
そうなると違いが出るのは、定例会議やアドバイスを求めた時に浸み出てくるベンチャーキャピタリストの経験や勘所だと考えました。
事業参加に消極的なハンズオフ型の投資家を好む経営者もいますが、イタンジの場合、「ロジカルかつゴリゴリと事業戦略を話したい」という“知的体育会系”の傾向があるため、ディスカッションパートナーの役割を果たせるキャピタリストを探しました。
結果的に、当初から一緒にやりたいと思っていたグロービス、ニッセイ・キャピタル、SMBCベンチャーキャピタルから出資を受けることができ、これから開催されるであろう、鋭い意見が剛速球で飛び交う(ある意味汗臭そうな)定例会議が今から楽しみです。

 

■「誰とやるか」にこだわり、最高のチームを作りたい

今後は、調達した資金を利用して採用を強化していきます。

イタンジは創業時も、今回の資金調達の時も「誰とやるか」を大切にしてきました。イタンジのミッションは、インターネット上で住みたい物件をきちんと自分で探せるような世の中をつくることです。 次のステップは、世の中の大きな課題をITの技術力で解決すべく、最高のエンジニアチームを作ることだと考えています。

先行者メリット、後発者メリット

IT業界において先行者の優位は、ネットワーク外部性によってもたらされると考えられている。

例えば、LINEのようにコミュニケーションプラットフォームが構築され、1億人のユーザーを集まると、LINEで連絡を取ることが多くのユーザーにとって一番便利になり、他のツールが使われなくなる。一般的には、先行者によって一度ネットワークが構築されれば、後発者が参入することは困難だとされている。また、ネットワーク外部性が働かなくても、一番乗りで市場に参入して、後発者が追い付けずに、そのまま市場が拡大して先行者がナンバーワン企業で有り続けるケースも多くある。

 

ところが、事業環境によっては先行者メリットが確保されず、後発者の方が有利になるケースがある。技術進歩と市場拡大の速さがポイントとなる。

例えば、ウォークマンのように市場拡大のテンポが速く、技術進歩が遅い場合は先行者メリットは極めて高い。ソニーは商品投入当初とほとんど変わらない製品を10年以上も売り続けることができた。

 

では、不動産IT業界の場合はどうだろうか。不動産業務システムに関していえば、技術進歩が速く、市場拡大が遅いパターンだと考えられる。5年前までは技術進歩は遅かったが、クラウドSNSスマートフォンなどの登場によって技術進歩のテンポが速くなっている。この場合、技術の変化が速いため、先行者の製品は陳腐化する。一方、後発者はより安い開発コストで製品を投入できるため有利になる。

しかし、後発者が投入した製品もすぐに陳腐化するため、優位性を保つことが難しい。一度は勝つことができても、勝ち続けることが難しい市場といういことだ。競争に勝ち続けるためには、技術進歩の速さに対応できる優れた開発力とそれを支える資金力が必要となる。

 

ここからの示唆は、不動産IT会社が成功する、あるいは生き残るためには

①技術を中心とした強みの構築、

販管費のかかる飛込み営業ではなくプル型での顧客獲得、

システム開発の投資を続けるための高い粗利益率、が条件になるということだ。

経営チームをつくるときに心がけた3つのこと

私がイタンジの経営チームを作ったときに心がけたことは3つあった。

 

・「誰とやるか」に強くこだわった

・「なぜやるか」を全員で深く共有した

・「何をするか」の前に、「どのようにするか」を決めた

 


ポイント1:「だれとやるか」に強くこだわった

一般的な事業立ち上げの流れは、まずはじめに理念(Why)、

次に事業領域(What)、次に戦略(How)、最後に組織(Who)を決める。

理念と事業領域が会社の根幹だとされている。

一方、イタンジの場合は、まずはじめに「誰と一緒にやるか」について深く考えた。

私は次の4点をメンバー選定の判断基準とした。

 

1. お金ではなく夢を追いかけている

2. 世の中を変えるのは誰かではなく自分だと信じている

3. 手がけた分野で優れた実績を残している

4. 仕事は最高の「遊び」だと考えている

 

事業環境は時間とともに変化する。 事業環境は変化すれば、最適な事業領域、戦略は変化する。

やることベースで人を集めると変化に対応することが難しい。業績の低迷によって事業転換を迫られている企業がなかなか変革できないケースは、やることベースで人を集めたことに一因がある。

情熱を持った優秀な仲間と起業すれば、大きな困難や事業環境の変化を乗り越えることができると私は信じている。

 

 

ポイント2:「なぜやるか」を全員で深く共有した

事業を始める前にまずはメンバーとそれぞれの原体験について共有した。最初の記憶、家庭環境、両親の存在について、幼少期に楽しかったこと、悲しかったこと、どんな遊びに夢中になったか、初めて学校に通った時の気持ち、学生時代に夢中になったことなど、人格形成に影響を与えた事象を洗い出した。事業に参加する理由をそれぞれの人生の文脈の中で捉えることによって「なぜやるか」をお互いに深く理解した。その結果、次のようなメリットがあった。

 

1. お互いを疑うことがなくなり、深い信頼が生まれた

2. モチベーションの源泉や得意なことがわかった

3. 事業の方向性について大まかに合意が得られた

 

 

ポイント3:「何をするか」の前に、「どのようにするか」を決めた

「誰とやるか」、「なぜやるか」が明確になった後に、私たちは行動指針を定めた。

行動指針は会社のDNAにあたるものだ。イタンジの行動指針は、

 

量の戦いで勝つことを捨て、質的なジャンプが生まれることを一番の狙いとしている。

出来上がった行動指針が次の通りだ。

 

1.  エンドユーザファーストによって業界の発展を実現する 

2.  真実に耳を傾け、本質を見抜く 

3.  人生は短い、行動しよう  

4.  最小リソースで最大効果

5.  勝つ時は大きく勝つ 

6.  それはクレイジーか?

7.  コミュニケーションをオープンに 

8.  言葉のチカラを発揮する

9.  謙虚さを忘れずに、人間性を高めよう 

10. 仕事は遊び

11. 不屈の精神 

12. 悩んだらワクワクする方を選ぶ

 

私は朝起きたときや仕事に取り組んでいるときに、この行動指針を頭の中で頻繁に参照している。

経験上、論理的思考にしたがって戦略を立てると、バランスがとれた優等生的なものに仕上がることが多い。私は事業戦略案をつくった後に行動指針を思い出して、あえて思いきりバランスを壊して、とがった戦略に書き換えるようにしている。

 

まとめ

スタートアップ時は人手が足りない。協力してくれる人を片っ端から巻き込みたくなる誘惑がある。

その誘惑に負けると、事業を拡大するために人を集めたはずなのに、社内をまとめるのに手いっぱいという結果になる。

メンバーの選定を徹底的にこだわること、事業に参加する意義を深く共有すること、行動指針を定めておくこと、これらが限られた時間とリソースで大きく事業を成功させるための秘訣だと私は考えている。

論理的思考の彼岸

ビジネス書ではロジカルシンキングが問題解決の万能薬のように取り上げられている。しかし、会社を経営していると論理だけではたどり着けない境地があることに気づく。
例えば、新規顧客を開拓しようと考えた時、クライアントへのアプローチ方法をMECEで洗い出したところで、効果的な営業戦略は立てられない。なぜなら、論理的思考で導き出したアプローチは、他の人がすでに実施した二番煎じの策であることが多く、営業を受ける側からすると「またか」となる。
結果を生み出すアイデアを発想出来るか否かは、経験に基づく「技巧」や人生で磨いてきた「センス」によるところが大きい。論理的思考とは違い、「アート」と「センス」は誰もが身に着けられるものではない。「問題解決はアートとセンスだ」なんて本があっても、読者が「習得できる」と思えないのでまったく売れないだろう。ロジカルシンキングの本が売れれば売れるほど、みんなが右の時に左へ、止まる時に全力で走るような天邪鬼な人間が成功しやすくなるのではないだろうか。
基礎体力としての論理的思考は必要だとして、まわりに頭一つ差をつけるためには、経験の量はもちろん、直観や遊び心といった思考的な揺らぎが必要だと思う。

不動産との出会い

夕暮れ時、戸建の建築現場で余った木材を積み木のように使って一人で遊んでいる。


これは私が不動産に触れた最初の記憶だ。5歳頃の記憶だと思う。父は不動産業で起業して、母はその会社の経理をやっていた。今思うと生活のいたるに不動産があった。保育園が終わると父が迎えに来て、建築現場に立ち寄り、父は大工とやりとりをして、その間、私は建築中の家の中で廃材をおもちゃにして遊んだ。会社に連れられたときは不動産のチラシのうらに落書きをして時間をつぶした。夕食中にも「ツボ」「へーべー」「カリイレ」「チャッキン」など子供番組では決して耳にしないような言葉が飛び交っていた。そんな環境で育ち、兄は一級建築士になり、私は不動産系IT社長になった。

<5歳頃>

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ずっと不動産に興味があったかと言うと、そんなことはない。10代の頃は、不動産は眼中になくバンド活動に没頭していた。(それでも思い返すと、バンドの練習場は建築資材置場だった)父はバンドをやる姿をみて「そんな暇があるなら大工になれ」と言った。大学に入学してからもバンド一筋だった。しかし、二十歳を過ぎた頃、音楽に人生を捧げるほど自分には音楽への情熱が無いことに気づきバンドをやめることにした。音楽は好きだったけれど、音楽以上に「どうすればバンドが売れるか」を考えることに自分の興味があることに気づいた。そして、世の中の不便を解決するようなアイデアを実行してビジネスで大成功しようと思い、音楽から商売へと大きな方向転換をした。今でいうスマ婚のようなビジネスモデルを考えたが、計画と実行力があまりにも不足していて、売上を上げることなく、学生時代の起業は失敗に終わった。起業で失敗して借金を背負い、滑り込むように就職活動を始めた。そして、不動産と再会することになった。

<音楽からビジネスの世界へ足を踏み出した頃>

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商社、金融、メディア、下着メーカーまで様々な業種の面接を受けたが、内定が出るのは何故かすべて不動産業界だった。ふたを開けてみれば、モーセに割られた海を渡るがごとく、不動産業界に導かれ大手不動産管理会社に就職した。(就職してからの話は次の機会にでも)

不動産に再会してから7年が経ち、最初の記憶から25年近くが経とうとしている。私は今、いつも自分の人生の傍に存在していた不動産に対して思うことがある。私は不動産に関わる仕事で、自分の生きた証を世の中に刻みたい。巨大な不動産市場においては人ひとりの人生なんぞ大海の一滴かもしれない。だが、私は不動産に人生をかける覚悟だ。まずは、永らく解決されないままになっている不動産取引における「情報の非対称性」「非効率」の問題を解決する。不動産の流通を変える新たな仕組みを1年以内につくり上げたいと考えている。

<そして今、イタンジのメンバーと>

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