イタンジ社長 伊藤嘉盛のブログ

ITを使って不動産業界にイノベーションを生むイタンジ株式会社の社長ブログ

スマホの普及と宅建業法の規制緩和で新しい不動産取引の形が生まれる

イケダハヤトさんにヘヤジンプライムを紹介していただき、Newspicksなどでも話題になっている。不動産業界がどのように変わっていくのかは注目のテーマなんだなと、改めて実感。

ヘヤジンプライムは仲介手数料が無料ということで、料金の部分にスポットが当たることが多い。だが、ヘヤジンプライムの本当の存在意義は、不動産仲介業務を自動化・システム化したことによって、今まで不動産会社を頼らないと貸し借りできなかった人が、自分の力で不動産取引をできるようになることだ。

今までユーザは物件を借りようとすると、せっかくスマホを使ってインターネット上で物件を探しても不動産店舗に呼ばれて内見をしている。個別物件の問合せをしたのに、電話で話していると、いつの間にか店舗に行って物件の紹介を受けることに話が変わっている。スパッと部屋を見せてくれない。なぜ不動産会社はわざわざユーザを店舗に呼ぶのか。

結論からいうと、不動産会社の都合だ。ユーザにも不動産会社にも、来店の必然性はない。それにも関わらず、不動産会社がユーザを店舗に呼ぶ理由は、対面のメリットを最大限活用して、成約率を上げるためだ。通常、不動産仲介の営業は以下のようなステップを踏む。

①Screening(条件と与信の確認)
ユーザの物件希望条件、物件を借りるに足る収入はあるか、今すぐ成約する顧客か、などを確認。
②Maching(物件提案)
希望条件に沿う物件を不動産業者間DBから探して、おすすめコメントなどを加えながら紹介。ライフスタイル、勤務先の駅、室内のこだわりポイントなどを引き出しつつ、ユーザの希望条件と市場にある物件をマッチングさせていく。

③Viewing(内見)
ある程度マッチングした物件を2~3件選び、実物を見学。

④Closing(商談)
どの部屋を借りるのか、ユーザに意思決定を促す。

①・②はメールと電話、③は物件現地で待ち合わせ、④も現地でやれば、来店する必要はない。ユーザにとっては直接現地に行けた方が楽なので、少なくともユーザからすると来店の必要性はかなり低い。一方、不動産会社の中には現地待ち合わせでOKな会社もあるので、来店が絶対に必要ということではない。

では、なぜ?それはユーザに来店してもらった方が、不動産会社にとって売上を増やすのに楽だからだ。通常、不動産会社が①と②のステップを省略したり電話やメールなどで非対面で行うと成約率が下がる。営業担当社は、店舗全体の数値管理をしている店長や先輩営業マンから、ユーザを店舗に呼んで対面でコミュニケーションするように指導される。店舗に呼ぶ必然性がないのに、営業成績を上げるためにはユーザを店舗に呼んだ方が効果的なので、「内見をするためには一度店舗に来てもらう決まりになってます」「大家さんの指示で、内見前に顔を合わせるように言われている」などという変な営業トークが生まれる。さらに悪質な場合、成約済み物件であるのにも関わらず紹介できると言って来店を促す。また、不動産会社内のスキル育成も、対面型の営業に最適化されている。どうすれば来店してもらえるか、来店した時にどのように接客をすればいいかを学ぶ。スキルが高くなるほど来店してもらえるようになるので、対面型営業への依存がさらに強化される。

実際のところ、ヘヤジンプライムも非対面でサービス提供してかなり苦労した。様々な工夫をすることで、非対面でも対面並のコミュニケーンができるようになってきた。イタンジの行動指針には『エンドユーザファースト』という言葉があるので、いばらの道であっても非対面コミュニケーションを選んでいる。今まで半日がかりだった部屋探しが、物件の現地に行くだけで済むので、ユーザの負担は相当に減るはずだ。

ネットには物件情報がある。みんなの手元にはスマホがある。宅建業法の規制緩和によって不動産契約の非対面化が実現する。時は近づいている。

新しい不動産取引の形が今、生まれようとしている。