イタンジ社長 伊藤嘉盛のブログ

ITを使って不動産業界にイノベーションを生むイタンジ株式会社の社長ブログ

物件数が多すぎて選べない時代の物件の探し方について

「今ある物件検索の仕方で、ユーザーは本当に欲しい情報を得られているのだろうか?」

これは僕が、常日頃から抱いている疑問だ。そしてその答えは、NOだと思う。少なくとも僕自身は、そう思っている。だから今回は、近い将来に流行るであろう、新しい物件検索の方法について考えてみた。結論を先に言うと、キュレーションとパーソナライズがよさそうだ、という話です。

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たとえばここに、「港区」への引っ越しを考えているAさんがいるとする。彼は仕事の都合で、2か月後には大阪から東京へ引っ越さなければならない。しかしAさんは関西生まれの関西育ちなので、東京に住むのは初めてだ。ただ会社の所在地が「港区」だったので、何となく「港区」で部屋を探そうと思っている。

そこでまずAさんは、とある賃貸ポータルサイトで、「港区」の物件を検索してみた。すると出てきたのは、「港区」にある約1万5000件の賃貸物件。しかもどれも似たような外観で、似たような条件の部屋ばかり。それが延々と一覧で表示されているので、Aさんは画面を見つめたまま途方に暮れてしまった……。  

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この結果には、Aさんでなくても疲れ果ててしまうだろう。約1万5000件の中から、自分が本当に住みたい部屋を見つけるのは至難の業だ。量が多すぎて、どの物件が良いのか見当もつかない。物件探しにどれだけの時間と労力を費やせば良いのかと、一瞬 気が遠くなってしまう。

この場合Aさんが知りたいのは、港区にある物件の「数」ではく、港区にある「オススメ物件」の情報だ。Aさんは、なにも1万5000件すべての情報を見たいわけではない。港区にある物件の中で、自分が住みたいと思える物件を、早く、正確に知りたくて、賃貸ポータルサイトを利用したはずだ。

例えば、HEYAZINEでは、「港区」で物件検索をすると、まずは「港区に住むならこの3エリア(=麻布/青山/赤坂)」ということをユーザーに提案している。これは厳選したオススメのエリアを提示することで、少しでもユーザーが、住みたい場所・住みたい物件に近づけるようにと考えて掲載しているものだ。つまり本当にユーザーのことを考えるのであれば、

◆「港区/1K/8万円以内のオススメ物件」10選
◆「港区/1LDK/徒歩5分以内のオススメ物件」10選

というように、厳選された物件情報のまとめ=「キュレーション」が必要だと思う。一覧表示で闇雲に物件を見せるのではなく、まずはキュレーションした「オススメ物件」を紹介する。そしてその上で、さらに物件を検討したいと思う人には、一覧を提示する。こっちの方が断然便利だなぁと思っている。

さらに言うと、物件検索自体が時代遅れなのかもしれない。今はニュースでも何でも、ユーザーの好みに合った「オススメ」のものが、自動的に届く時代だ。だから物件検索においても、ユーザーが1度条件を指定すれば、機械学習をして、2回目からは希望の物件が自動的にユーザーに届く。そしてそれは希望の条件に合致するものだけでなく、条件からユーザーの好みを“類推”して、オススメの物件を提案するようなサービスだ。そして、クリックするたびに物件提案の精度があがっていく。条件登録や類似物件からのオススメ情報配信は既にあるが、賢くなっていく情報配信の仕組みはまだないのかなと。そんな仕組みがあればいいなと思っている。

これからは賃貸物件を、“探さなくても探せる”とか“探す前から探されている”ようになっていくような気がする。ユーザーがアクションを起こさなくても、必要な情報が自動的に入ってくるようになる。

ウェブで物件検索という行動が生まれてからもう20年近くが経とうとしている。HEYAZINEでは、“今ある”部屋探しから一歩進んで、“今はまだない”部屋探しを創造したいと思っている。